さまざまな屋内位置推定手法が提案されている中で,磁気センサは補助的な役割として利用されており,磁気センサのみを用いた屋内位置推定精度の追求は十分に行われていない.
そこで磁気センサによる屋内位置推定を目的として,移動経路推定を行った. 多くの建物内において,ある地点から目的地までの移動経路は限られている.また残留磁気の影響により,異なる経路の移動によって観測される磁気データ系列は異なるが,同一経路の移動によって観測される磁気データ系列は類似する. 提案手法では,これらの特徴を利用し,移動経路推定を行った. 推定方法には,位置推定への発展や部分的な経路や逆方向に歩いた経路も同様に推定するため,パーティクルフィルタを採用した. パーティクルフィルタにより歩行時に観測される磁気データ系列と,あらかじめ収集しておいた各経路の磁気データ系列との比較を行い,各経路に集まったパーティクルの総数から移動経路を推定した.
提案手法の評価実験を,実環境で収集したデータを用いて行った. その結果,3種類の候補経路から経路を推定する場合,正解率は約97%であった. 今後は移動経路推定で用いた手法を活用し,位置推定への発展を試みる.