シアノバクテリアの持つタンパク質KaiA,KaiB,KaiCは、 生体エネルギー通貨 ATPと共にin vitroで自発的な24時間周期の振動を生み出す。具体 的には、KaiC 六 量体にはリン酸の結合する部位が12あり、これらに結合している リン酸の数 が24時間周期で振動する(リン酸化振動)。この振動は温度に依存せず一定周期 を保つ。加えて、KaiCの持つATP加水分解活性もこの周期に同調して高低し、さ らにリン酸化振動の周期と相関を持つことが分かっている。
現在、リン酸化振動を示したモデルは既にいくつか存在するが、ATP加水分解 活性の振動とリン 酸化振動を同時に説明できるモデルは未だに存在していな い。そこで我々はこれら2つの振 動を生み出すメカニズムについて解明するため に、KaiC六量体一分子のみに集中 して化学反応の確率シミュレーションを用い ることで、2つの振動のダイナミクスを調べ ている。
本発表ではKaiC六 量体全体でのATP加水分解反応は周期的な反応順 序を持つ と仮定し、各単量体の構造による相互作用は隣り合ったもの同士にのみ 影響を 与えるという条件の元では、どのような周期的反応が起こりうるかを探った。