近年,計算機の発達とともに乱流の直接数値シミュレーション(DNS)が行われている. しかし, 3次元乱流においてレイノルズ数の増加につれてその自由度は急激に大きくなるため, 巨大自由度の乱流のDNSはスーパーコンピュータをもってしても不可能である. そのため, 乱流の自由度を適切に縮約できる手法の開発が重要となる.
情報縮約の手法の一つとしてウェーブレット解析に基づく手法がある. ウェーブレット解析により, 位置とスケールについての情報が同時に抽出される. そのため, 乱流の特徴である多スケール性や間欠性の表現に適している. 一様等方性乱流については, ウェーブレット解析による情報縮約で数%の自由度から構成される秩序渦が乱流場の統計をよく再現するとわかっている.
固体壁面を持つ乱流が工学では重要な役割を果たしている. その規範的な流れの一つが平行二平板間乱流である. 本研究の目的は, 平行二平板間乱流に対して秩序構造の役割を解明することである. 具体的には, 平行二平板間乱流の渦度場のDNSデータに対して3次元ウェーブレット変換による秩序構造の抽出を行い, 代表的な統計量を計算した. その結果, 3.3%の自由度から構成される秩序構造は元の乱流場の渦度場, 統計的性質をよく再現するとわかった.