ゲル薄膜の表面をUV照射により改質し,溶媒を加えて膨潤させると,照射時間の長さに依存して異なる座屈パターンが現れる.また,Caiらの理論的な検討によって,ゲル薄膜の反りがパターンに影響することが指摘されている.しかしながら,詳細なメカニズムは解明されていない. そこで本研究では,高分子ゲル膜の膨潤誘起座屈の有限要素解析を行った.有限要素解析にはHongらのゲル材料のための不均質場理論を用い,材料定数には実験で用いられたPDMSとエタノールの値を使用した.解析モデルとして,反りの無いモデルと反りの有るモデルを考え,初期不整としてゲル膜の表面にランダムな凹凸を導入した.結果として,反りの無いモデルの解析では,Caiらが理論的に予測した格子状のくぼみパターンが得られた.また,膨潤量の増大に伴いくぼみ同士の融合が起こり,複雑なパターンに変化した.この傾向は実験と一致している.一方で,反りの有るモデルにおいては,解析領域の中心部では格子状のくぼみパターンが出現し,側面では六方配列のくぼみが出現した.これらの結果は,Hongらの不均質場理論によって高分子ゲル膜の膨潤座屈現象を解析できる可能性を示している.今後は,より詳細な検討を行い,パターン形成のメカニズムの解明に取り組む.