ゲルを溶液に浸すと溶媒分子を吸収するという膨潤現象を利用したマイクロデバイスの開発が,近年盛んに行われている.そのため,膨潤現象を考慮した超弾性体材料モデルの重要性が増している.しかし,従来の超弾性体材料モデルでは,ゲルの初期剛性と膨潤度の関係はべき乗関係で表現できるが,実験値とは一致しない.
本研究では,ゲルの初期剛性に及ぼす膨潤度の影響を考慮し,超弾性体材料モデルの開発を行った.まず初めに,実験データを整理することによって,ゲルの初期剛性と膨潤度のべき乗関係を調べた.その結果,材料ごとに初期剛性と膨潤度のべき乗関係が変わることがわかった.したがって,初期剛性に及ぼす膨潤度の影響は,材料パラメータとみなさなければならないと言える.これを考慮して,高精度なモデルの開発を行った.
モデルの開発では,代表的な超弾性体材料モデルであるNeo Hookeanモデルを偏差成分と体積成分項に分け,偏差成分に関して修正を行った.さらに初期剛性に及ぼす膨潤度の影響を考慮できるパラメータを導入し,より高精度な超弾性体材料モデルを提案した.提案モデルと実験値,従来モデルを比較したところ,提案モデルは実験値と非常によく一致した.