創薬初期段階においては、 膨大な化合物ライブラリの中から疾患の原因となる標的タンパク質に結合する化合物が 探索される。 計算機薬物スクリーニングは、このステップを効率化することができる重要な手法である。
計算機薬物スクリーニング手法には大きく分けて、 標的タンパク質との結合自由エネルギーの低い化合物を探索する手法と 既知の薬物をテンプレートとしてそれとの形状類似性が高い化合物を探索する手法とがある。 後者の手法は、スクリーニング性能、および計算コストの観点などの点で前者より優れている。 しかしながら、新規形状を持つ薬物化合物を発見しにくい点や 標的タンパク質との相互作用の影響を反映していない点などの問題があった。
本研究では、複数の薬物化合物を重ね合わせたマルチプルテンプレートの作成および、 標的タンパク質との立体障害を考慮することによりこれらの問題を解決する試みを行った。
性能評価の結果、新規形状を持つ薬物化合物の選択において、 他の手法と比べて特に優れた成績を示した。 また、タンパク質の立体障害を考慮することにより、 選別性能の向上させることのできる標的タンパク質を確認できた。