本研究では高速増殖炉などにおける冷却材や,鉄鋼分野などで利用されている液体金属に注目する. 液体金属は電気伝導性を持つ流体であり,多くの場合,乱れた流れ,乱流状態(MHD乱流)になっている. このような流れでは,例えば液体金属と非金属混入物の分離が課題となっており,流れと非接触な磁場を用いた流れの制御が望まれている.
近年では計算機の発達とともに,実験では測定が困難な,流れ場の空間構造も容易に解析できる直接数値計算が行われるようになってきた. 最近,壁を境界にもつ乱流の中で最も規範的な流れであるチャネルMHD乱流の直接数値計算が行われ,磁場を印加した際にチャネル中央付近の乱れは抑制され,壁近傍は乱流状態のままであることが報告された. この乱流・非乱流の混在は,乱れの弱いMHD乱流に磁場を印加した際には,みられなかった現象である.
一方,電磁流体ではない一般的な流体においては,乱流・非乱流の混在は様々な形態で観察されており,特に乱流・非乱流に挟まれた界面は物質の拡散に重要な役割を果たすため,界面の解析が盛んに行われている. 本研究では,この解析をMHDチャネル乱流に適用し,乱流・非乱流界面の定量的な評価ならびに界面近傍での物理現象の解明を行う.