氏名 : 矢野 翔也 (281167290)
所属 : 大野研
題目 : 分子動力学法によるβ-Snの塑性変形解析:MEAMポテンシャルの有効性の検討
概要 :
近年,β-Snを主成分とする鉛フリーはんだ材の普及が進んでいる.また,電子デバイスの小型化に伴い,はんだ接合部の微細化が進んでいる.このような背景から,β-Snの塑性変形に関するミクロな視点からの理解が求められている.その足がかりとして,松嶋は第一原理計算を用いてβ-Sn単結晶の理想せん断変形解析を行った.しかし,第一原理計算で扱える原子の総数は数千個程度が限界であり,解析は極めて理想的な条件に限定される.そこで本研究では,より多くの原子を扱うことのできる経験的ポテンシャルを用いた分子動力学計算により,格子欠陥,温度,部材形状などの因子がβ-Snの塑性変形過程に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている.まず,β-Snの格子定数を良く再現するパラメータがすで
に提案されているMEAMポテンシャルの,塑性変形に対する有効性を検討した.具体的には,β-Snの一般化積層欠陥(GSF)エネルギーと弾性定数を計算し,第一原理計算結果と比較検討した.その結果,GSFエネルギーを定性的には再現するものの,定量的には3倍以上の過大評価となった.弾性定数に関しても最大で700倍の誤差を生じた.そのため,塑性変形を再現する新たなパラメータを決定する必要があり,それを今後の課題としている.
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