近年,資源・環境問題対策が至る所で行われており,自動車エンジンでも高効 率,低公害化が求められている.その中で,燃料と空気の予混合気を圧縮 する ことで温度を上昇させ自己着火させる燃焼方式(予混合圧縮自己着火)が注目さ れている.エンジンの性能向上のためには着火タイミングの制御が 重要であ り,燃焼と流れの相互作用およびその様々な条件(温度や燃料濃度の分布,乱流 強度や時間スケール等)への依存性を知る必要がある.乱流燃 焼の3次元直接数 値シミュレーション(DNS)は膨大な計算を必要とするが,近年の計算機の急速 な発達に伴い,研究手段としての有効性が高まって おり,実験による測定が困 難な物理量や火炎の構造が解析できるため注目されている.
近年,生田ら(2012)によりnヘプタンの自己着火過程の3次元DNSが実施され, 自己着火前の低温酸化反応において,急激な熱発生を伴う領域 (反応帯)が渦 と相互作用しながら膜状に広がる様子が報告されたが,その詳細は明らかになっ ていない. そこで,本研究では,膜状の反応帯近傍で起きる現象の詳細および反応と流れの 相互作用を解明するため,反応帯近傍の様々な物理量の可視化と条件付 き統計 解析を用いた現象の定量化を実施する.