そこで，本研究では離散転位塑性法という，個々の転位の運動を直接数値計算す る手法を用いて，塑性寸法硬化の発現メカニズムを明らかにすることを目指す．解析 には，周期均質化法と重ね合わせ法を組み合わせた理論を用いており，ミクロな現象 （転位の応力場の影響）とマクロな現象（ひずみ硬化）の双方を関連づけて解析を行 うことが出来る．
これまでに山口らは，弾性層と弾塑性層で構成されるラメラ複 合材料モデルの解析を行い，ラメラ組織の果たす役割の検討を行った．弾性層の厚さ とすべり面のずれをパラメータとして解析を行い，弾性層が薄い場合には，すべり面 ずれが変化するとひずみ硬化に変化が現れることを明らかにした．この結果は，全て の弾塑性層が同じすべり方向を持つ場合の結果によるものであり，より一般的な場合 については未だ調べられていない．
そこで今回の解析では，隣接する弾塑性層間 における結晶方位差をパラメータとし，その影響をミクロとマクロの双方の観点から 考察する．