剪断層が固体壁に拘束されない乱れた流れを自由剪断乱流という。この流 れの理解は工学的にも学術的にも重要であり、これまでにも多くの研究が行われ てきた。自由剪断乱流には乱流混合層、乱流噴流、乱流後流などの種類があり、 その中でも乱流混合層は速度不連続面の不安定性により形成される、乱れが空間 的に局在する最も基礎的な流れの一つであり、その理解は重要である。
自由剪断乱流における未解決な課題の一つとして、乱流領域と非乱流領域 の界面の流れの3次元的構造とダイナミクス、及びそれらの物質混合への役割の 理解と定量化が挙げられる。近年、Weterweel(2009)らは乱流噴流の実験データ を解析し、渦度のある成分が乱流・非乱流界面で局所的なピークを持つことを明 らかにした。しかし、実験では3次元的解析が困難であり、界面の流れの詳細を 理解するには至っていない。
本研究は、乱流混合層の直接数値シミュレーションによるデータを用い て、乱流・非乱流界面の流れを調べる。条件的平均による解析や可視化を行い、 界面の流れの3次元的構造やダイナミクス、及びそれらの物質混合への役割の理 解と定量化を目標とする。