本研究では,実対称一般化固有値問題について考える.このような問題は,電子構造計算などの応用分野に現れ, とりわけ大規模な問題を解く場合は多大な計算時間を要することから,高速な解法が望まれている.
実対称一般化固有値問題に対する従来法として,Lanczos法が応用分野で広く利用されている. Lanczos法では,その計算過程において連立一次方程式を繰り返し解く必要があるため, 問題が大規模になると膨大な計算時間を要してしまう. そこで本研究では,この計算時間の削減を目指し, まずLanczos法の枠組みを拡張したArnoldi(M,W)法を提案する. Arnoldi(M,W)法では,2つの行列 M, W に任意性を与えることにより,様々な解法の構築を可能としている. その一例としてNeumann級数展開の活用を考え, 従来法の問題点であった連立一次方程式の計算を近似的に行うことで,計算時間の削減を試みる. 本発表では,このNeumann級数展開を活用した提案法を示すとともに, 数値実験により従来法と提案法の性能を比較する.