氏名 : 板垣 慎祐 (280967020)
所属 : 旧笹井研(美宅研)
題目 : KaiCタンパク質の概日振動シミュレーションにおけるリン酸化サイクルとATPase活性の協調
概要 :
シアノバクテリアが概日リズムを示すためには、その生体内に存在するKaiA、KaiB、KaiCの3つの時計タンパク質が不可欠であるが、試験管にその3つの時計タンパク質とATPを入れただけで約24時間周期のKaiCリン酸化自律振動が再構成されることが示されている(Nakajima et al. Science, 2005)。また、この系では、KaiCは自身のリン酸化に使うよりも10倍程度多くのATPを加水分解していることが確かめられている。近年の実験で、周期変異体KaiCのリン酸化の周波数とそのATPase活性には正の相関関係があることが示された(Terauchi et al. PNAS, 2007)。
本研究では、リン酸化、脱リン酸化、ATP加水分解を考慮したKaiCの理論モデルを構築し、概日振動シミュレーションを行った。その結果、Terauchiらの実験は定性的に再現できたが、ほかにも興味深い結果が得られた。まず、ATP加水分解速度のみを変化させたときのリン酸化の周波数の変化とATPase活性の変化には負の相関関係が見られた。また、ATP加水分解速度が小さければ小さいほど、周期のばらつきが大きくなった。このことは、周期の安定したKaiCのリン酸化振動のためには、ある程度ATP加水分解速度が大きい必要があるということを示している。
目次に戻る