プロセッサとメモリの動作速度の差による,ロード命令がキャッシュ・ミスした際の長いレイテンシが性能低下の一因となっている.その対策の一つとして,命令を本来の実行タイミングより早く先行実行することにより,データをあらかじめキャッシュに読み込む手法がある.物理レジスタ2段階解放方式は,物理レジスタを本来のタイミングより早く仮に解放し,後続命令に割り当てることにより,先行実行を可能にする.
しかし,先行実行は実行命令数の増加により消費電力を増加させる.これに対し,先行実行対象を,頻繁にキャッシュ・ミスを起こす命令と,それが依存する命令のみに絞ることにより,消費電力を削減する手法が提案された.しかしこの手法は,2段階解放は停止しないため,そのための機構の電力は変わらない.
本研究では,先行実行しない期間に2段階解放を停止することにより,消費電力の削減を図る.先行実行対象命令列の先頭から終端までの期間だけ2段階解放した場合,先行実行の前に物理レジスタが解放され先行実行が行われず,性能が大幅に低下する.この為,ループの利用などにより,先行実行対象命令よりも早く2段階解放を開始する手法を検討している.