氏名 : 南 慎太朗 (280767242)
所属 : 笹井研
題目 : 立体構造予測ツールを用いたカルモジュリンの構造変化の研究
概要 :
ある種類の蛋白質ではリガンドの結合による局所的な構造変化が遠く隔たった領域にまで及ぶ場合があり、このような構造変化はアロステリーと呼ばれている。「蛋白質の構造変化がどのようにして構造上を伝わるのか」というアロステリーに関する問いは蛋白質の動作原理に関わる本質的な問題であるが、詳細はいまだ解明されていない。我々は、フラグメントアセンブリと呼ばれる蛋白質立体構造予測手法の一つを応用してこのようなアロステリーを伴なう構造変化を研究している。フラグメントアセンブリ法はフォールディングした蛋白質の構造を予測するために開発された手法であるが、そのフォールディング過程をもよく反映していることが知られている。さらに蛋白質のフォールディング過程と構造変化の過程には多くの類似性を見出すことができる。これらを踏まえると、予測シミュレーションによって得られる予測構造の集団にはアロステリーに関与する部位や構造またはその振舞いが反映されているはずである、というのが本研究の見方である。
本研究では、アロステリーを示す代表的蛋な白質であるカルモジュリンをターゲットにフラグメントアセンブリ法を用いたシミュレーションを行った。予測シミュレーションで得られた構造集団に直接解析を加える、あるいは構造集団をもとに得られた自由エネルギーランドスケープを解析するといったアプローチでアロステリーの解明に迫った。その結果、本研究手法によってカルモジュリンのアロステリーを極めてよく再現できることがわかり、従来までの実験やシミュレーションでは得られたことのない情報を得ることに成功した。これらの結果から、これまで全く理解されていなかったアロステリーに対して一つの重要な解釈を見出した。
目次に戻る