概要 :
近年、金融商品の複雑化により複数資産に依存するオプション価格計算の必要性が高
まってきている。しかし、この計算量は大きいため、金融の実務ではより高速な数値
計算アルゴリズムが求められている。そこで、本研究では複数資産に依存するオプショ
ン価格計算の高速化を行う。
先行研究では2資産に依存するオプションへ価格計算への高速ガウス変換の適用が行
われている。これは、資産価格変動にBlack-Scholesモデルを用いた場合、オプショ
ン価格がガウス分布とベクトルの畳込み積(離散ガウス変換)で計算できることに注目
し、この部分に高速ガウス変換を適用して高速化されている。これにより、空間分割
数に対して2乗の割合で増加する計算量を1乗に抑えることができる。しかし、この
方法は資産数の増加に従い計算量が指数的に増加する問題点がある。
そこで本研究では、この問題点が改善された改良型高速ガウス変換を用いて、従来の
アルゴリズムでは計算が困難であった複数資産に依存するオプション価格計算の高速
化を目指す。
今回の発表では、まずオプションと高速ガウス変換についての説明を行い、次に1資
産の場合に高速ガウス変換を適用した数値実験結果を示す。