乱流現象は流体力学の基礎方程式(Navier-Stokes方程式)に従う一方、強い 非線形性と巨大自由度を持つために、その挙動のすべてを把握することは困難で ある。この様な場合は、むしろ何らかの統計的平均量の普遍法則に関する知見を 探ることが必要となる。乱流の普遍法則として、Kolmogorovの4/5法則(以下 4/5法則とする)がよく知られている。4/5法則は Navier-Stokes方程式(以 下NS式とする)に等方性と一様性を仮定して得られるKarman-Howarth方程式 (以下KH式とする)から導くことができる。慣性小領域が十分広い場合、乱流 場の定常性とKH式の粘性項が無視できることを仮定し、さらに外力の影響を慣 性小領域で無視すると、KH式から4/5法則が導かれる。この様に4/5法則 は、流体の基礎方程式であるNS式から幾つかの仮定を基に厳密に求められる唯 一の普遍法則である。しかし、4/5法則をNS式から導く際の仮定は必ずしも 自明なものでは無い。
そこで本研究では、3次元一様等方性乱流の大規模数値シミュレーション (DNS)により得られたデータをもとに、4/5法則をNS式から導く際の仮 定を詳しく検証することを目的とする。