乱流の重要な性質のひとつに時間及び空間的な間欠性がある。間欠性とは一般に、小さな変化は長いスケールで、大きな変化は短いスケールで観測される変動を言う。乱流の統計理論には、この間欠性の効果を適切に取り込む必要がある。
乱流の間欠性に関する理論のひとつにKolmogorov(1962)による対数正規(log-normal)理論がある。この理論では、スケールrの領域で空間平均したエネルギー散逸率erが重要 な量となり、エネルギーカスケードは、離散的な長さスケールri=air0(i = 0, 1, …, n; a (< 1):定数; r0:最大渦の長さ)の領域で空間平均したエネルギー散逸率eiの乗算過程(multiplicative process)として表現される。この理論の結論として、nが十分大きいときにenは対数正規(log-normal)分布に従うことが示される。ただしこのとき、スケール間のエネルギー散逸率の比ai = ei/ei-1の統計に対してある仮定が必要になる。しかし、この仮定は必ずしも自明なものではない。
そこで本研究では、3次元一様等方性乱流の大規模直接数値シミュレーション(direct numerical simulation : DNS)により得られたデータをもとに、aiの統計について詳しく解析する。