近年,材料の微細化に伴い,結晶組織のレベルで制御された材料を生産するこ とが重要になってきている.これを実現するために,ある条件を与えて生成過程 を制御することによって目的とする特性を持つ結晶組織を得ることが必要であ る.このような結晶組織が生成する際,原子レベルで観察すると,結晶が成長し やすい方向があることが分かる.この特徴を表すパラメータとなるのが界面自由 エネルギーやカイネティクス係数である.結晶成長を解析するモデルとして フェーズフィールドモデルが挙げられるが,これらの物性値は,実験により測定 することは非常に困難であるため適当な値が設定されている.そのため結晶成長 の過程を正確に再現することができない.そこで,本研究では,分子動力学法を 用いて原子レベルのシミュレーションからこれらの物性値を算出することを目的 とする.
本研究では,まず,固液界面を有する分子動力学モデルを作成した.そこでは 本研究室で用いていた粒界モデルを改良して用いた.また,最近接原子の相対位 置を計算することにより固液界面を正確に決定する方法を構築した.今後は,こ の固液界面モデルを用い,各結晶方位において界面自由エネルギーを計算し,そ の異方性を求める.さらに,結晶成長モデルを用いてカイネティクス係数および その異方性を求め,各結晶方位における成長挙動の解析を行う.