近年，人間の主観性に着目した研究が数多く報告されている．特に感性工学の分野では，アンケートのように人の感性情報が含まれた データ（感性データ）を解析し，製品開発やマーケティングへ応用する研究が盛んに行われている．解析の主なアプローチとしては，(1) 平均化したデータに対して統計解析を行う，(2)個々のデータに対して個人差を考慮した解析を行う，といった2つのタイプがある．また， 多数の被験者から感性データを得た場合，分析目的に応じて基準を設定し，層別分析を行うのが一般的である．他にも層別とは異なる方法 として，データの性質を捉えた基準を定義し，クラスタリングが行われることもある．
　本研究は，多数の感性データに対して，個性によるクラスタリングを行うことを目的としている．なお個性とは，個々の感性データに含 まれる特徴情報のことを指している．本研究では，印象語空間中における対象の分布構造（対象間の類似関係）を個性と定義し，プロクラ ステス分析を基準とするクラスタリング手法を提案する．実際のアンケートから得られた評価データ（感性データ）に提案手法を適用し， 得られた結果を分析することで，各クラスタの対象間の類似関係について考察する．また，クラスタ内での印象評価を調査し，対象分布と 印象語とを関連付けた被験者間での比較が可能であることを示す．