熱と音波の相互作用で生じる現象を熱音響現象と呼ぶ.この熱音響現象のひと つに熱音響自励振動と呼ばれる現象がある.これはスタックと呼ばれる流体を満た した細い管にある一定の温度勾配を与えることにより,管内の流体が振動を開始す る現象である.熱音響自励振動の応用として,熱音響自励振動によって生じる進行 波音波を利用した高効率なエンジンが提案されているが,熱音響エンジンは未だに 実用化されていない.このため,熱音響自励振動現象の理解を深めることは重要で ある.
本研究の目的は,数値シミュレーションを用いて熱音響自励振動を理解するこ
とである.熱音響現象を理解する上で,熱から音波へのエネルギー変換が行われて
いるスタック内部の流れの様子を知ることは重要である.しかし,スタック内の流
れを実験的に直接可視化することは,スタックがセラミックスや金属メッシュなど
で作られているため非常に困難である.このため,特に,スタック内部およびス
タック周辺の流れに注目して,熱音響現象の解析を行う.