繊維強化複合材は比強度に優れ,航空・宇宙分野やスポーツ用品など様々な分野で使用されている.一方向長繊維強化複合材 内で繊維が破断すると,隣接繊維には局所的に応力集中が生じる.この応力集中は繊維破断の連続的進行の原因となるから隣接 繊維の応力分布の解析は強度評価上,最も基本的な検討課題のひとつである.最近本研究グループでは,1本の破断繊維に隣接す る繊維の応力分布に対する3次元解析解の導出に成功した.
本研究では,上述の3次元解析解を用いて,繊維が複数本破断した場合の隣接繊維の応力集中を予測する.このためまず, Phoenixら(1993)が提案したBreak-Influence Superposition(BIS)法を3次元に拡張した.次に,BIS法と上述の1本破断時の解析 解を用いて,2本破断時の隣接繊維の応力分布に対する解析解を導出した.つづいて,解析解の妥当性を検討するため,2本破断 時の3次元有限要素解析を行った.解析解と有限要素解を隣接繊維の応力集中係数に関して比較したところ,両者は概ねよく一致 した.