自然界には自己集積現象が数多く観察され る.これらの自己集積過程においてはすべての事象を明示的に規定するような設 計図といったものは存在せず,物理化学的な物質間相互作用を活用することで自 律的に形態形成がなされている.人工物の構築においても,このような概念は広 く応用できると期待される.
このような要請にもとづき,ロボティクスの 分野では,モジュラーロボットを用いて自己集積能力の実現を目指した研究が行 われてきたが,従来の研究はアルゴリズミックな手法に基づいているため,シス テムの大規模化・最終形態の複雑化に伴い,個々のモジュールの振る舞いを規定 するアルゴリズムが劇的に複雑化する可能性が否めない.
これに対し本研究では,制御系と機構系間の 有機的連関を通して発現する創発現象を活用することにより自己集積を実現する モジュラーロボットの構築を目指す.この手法のもとでは,自己集積による形態 形成は,従来手法のように制御手順単体により規定されるものではなく,物体間 の物理的相互干渉をも活用した力学的な安定状態への移行の帰結として発現す る.シミュレーションの結果,モジュール間接着性の不均一性により異種モ ジュール群が分離した形態へと時間発展するという現象が確認されたので報告する.