従来のロボットの設計においては,「制御系と機 構系の適切な連関」はほとんど考慮されず,機械システムの高度化は専ら制御系のみの高機能化によってなされてきた.そのためロボットの振る舞いは 制御系の完全な支配下におかれ,結果として,制御コストの増大や環境変動に対する脆弱性などのさまざまな問題が顕在化している.
本研究は,機構系全体の「剛性」を可変とするシス テムを構築することにより,ロボットの振る舞い生成における制御系と機構系の適切な連関について議論するものである.課されたタスクや環境の変動 に応じて関節の剛性を最適化することにより,制御系と機構系が個々に持つ特性を最大限に活用するにとどまらず,環境を含めた三者間の相互作用から 興味深い現象が創発すると考える.
以上の知 見に基づき,本研究では「弾性要素」に着目した.既に筆者らは,自然長を一定に保ちつつ任意時の弾性率変化を可能とする可変弾性要素を提案してい る.この可変弾性要素を拮抗的に関節へ実装することにより,位置と剛性の独立制御が可能である.
本発表においては,この拮抗筋型関節駆動機構における位置と剛性の独立制御について報告す るとともに,今後の展望として蛇型ロボットへの応用を紹介する.