近年ではセル構造体や,繊維強化複合材料など人工的な微視構造を持つ材料が 多く開発されている.それらの材料は一般的に周期構造を有しているとみなせる が,複雑な微視構造のために,マクロな非弾性変形の均質化特性を解析解により 評価することが非常に困難である.
周期構造を持つ材料を解析する手法として均質化理論がある.均質化理論は, 周期単位であるユニットセルのみを有限要素解析することにより,微視特性と巨 視特性を評価することができる理論である.よって,均質化理論を用いて周期材 料のマクロ非弾性特性を評価しつつ,マクロ構造物の非弾性有限要素解析を行う ことで,複雑な微視構造を有する構造物の精度よい解析ができると考えられる.
そこで本研究では,均質化理論に基づく非弾性周期材料マルチスケール解析手 法の構築を行った.均質化理論の定式化では,巨視的解析の増分計算の安定化の ため陰解法に基づく巨視的応力の評価,およびNewton-Raphson法による反復計算 に2次収束をもたらすコンシステント接線係数の導出を行った.最後にFCC多結 晶モデルへの適用により,このアルゴリズムの妥当性を検討した.