鞭毛により推進する微生物(以下、鞭毛虫と呼ぶ)の運動に関する流体力学的立場 からの研究がTaylorにより始められ、これまで様々な研究がなされてきた。また近 年、バイオテクノロジーやマイクロマシンの研究に関連して再び注目を浴びてきてい る。
この鞭毛虫に関連した流れのReynolds数は10-5〜10-2程 度と非常に小さいため、その流れはStokes流として近似され、今まで以下の2つの方 法で研究されてきた。 1つはStokes方程式を境界積分方程式に帰着させ、境界要素法を用いて鞭毛虫の運動 をシミュレーションする方法である。この方法には任意形状の鞭毛虫に対して適用で きるという利点がある。 もう1つはStokesletなどの特異点を鞭毛虫内部に分布させて解く方法である。鞭毛虫 の鞭毛は細長いため、この方法にもとづくslender body theoryを用いれば、境界要 素法より容易に鞭毛を扱うことができる。頭部に対しては、その境界条件を満たすた めに頭部の外部にあるStokesletに対する鏡像を用いる必要がある。しかし、球に対 してしかその鏡像が解析的に知られてないため、頭部の形状が球に制限されてしま う。
そこで、本研究では頭部に境界要素法を適用し、鞭毛部にslender body theoryを 適用することを目指している。この方法を用いて鞭毛の平面運動により推進する微生 物の運動の数値シミュレーションを行い、頭部の形状と効率との関係を調べる予定で ある。