本研究は渦輪が物体を過ぎるときに発生する放射音の直接数値シミュレーション (DNS)を行い、音の発生及び伝播のメカニズムを明らかにすることが目的である。
これまで流体音の研究は理論的・実験的に多く行われており、計算機性能の向上
に伴い最近では数値計算による研究が多くなされるようになっている。しかし、流れ
場と音響場を直接同時に求める直接計算(DNS)は計算機に対する負荷も大きいため、
空力音響理論と数値計算を組み合わせた例が多い。
そのような場合、限られたマッハ数やレイノルズ数、観測位置でしか空力音の予測が
できず、その適用制限も定量的に明確でない。このため全領域にわたり圧縮性ナヴィ
エストークス方程式を解くDNSによる解析を様々な流れ場に対して行うことが重要と
なっている。
渦輪同士の衝突や、一様流中の物体から剥離する渦によって放出される空力音な
どの例におけるDNSを用いた解析がInoueらによって行われているが、物体と渦輪の干
渉の問題に対するDNSを用いた取り組みはまだなされていない。
この場合渦輪の強さを任意に変えることが可能なので、一様流中の物体の例よりも高
いレイノルズ数の条件下で解析を行うことが可能であると考えられる。物体と渦輪の
干渉の問題はヘリコプターの回転音を理解するための簡単化の一つである。
現在は軸対称な場合においての解析を行うべく格子生成などの準備を進めてい
る。
音波を高精度に捉えるために、高精度・高解像度の差分法である結合コンパ
クト差分スキームを用いる。
その後、3次元円筒座標系に拡張し大規模な計算を行う方針である。