近年,脚式ロボットの制御において,実世界で自律的な適応を見せる生物の歩行を生成する神経回路(Central Pattern Generator, 以下CPG)を模擬した制御手法が注目を集めている.CPGによる歩行制御の特徴は,ロボットが有する機械系ダイナミクス と環境が有するダイナミクス,そしてCPGによる神経系のダイナミクスの三者間での相互作用(引き込み現象)の結果として,歩行が 創発的に生成されることにある.この事実は,上述の三者の相互作用を適切に設計することが可能であれば,あらかじめどのような変 動が起こるかを規定できないような無限定環境においても,実時間適応可能な歩行を生成することが可能であることを示唆している. 歩行の実現を可能とする引き込み領域を拡大する方策は,大別すると以下の三つに分類できる:
本研究では,方策3に焦点を当て,歩行生成に適した広大な引き込み領域を有する神経振動子の考察を行うことを目的とする.本研 究は,その初期段階として,Ijspeertらが提唱した非線型振動子を4脚ロボットのコントローラとして適用し,これまでのCPGによる制 御で多用されてきた松岡の振動子を適用した場合との比較実験を行い,結果について考察する.そして,これらの比較実験を通して, 新しい神経振動子モデルの構築を目指す.