近年,ネットワークの普及により, マルチエージェントシステムに関する さまざまな研究が行われている.
自ら知識を獲得し, 判断, 行動するような 知的なエージェントの実現には, 知識ベースシステムが不可欠である.
しかし,各エージェントが独自に 知識ベースを持つ環境では, 各エージェントが独立に自身の知識ベースを 変更していくために, 各知識ベース間の一貫性が保たれている保証はない. そのため, エージェントが協調的に動作するには, 各知識ベースの持つ知識を統合し, 無矛盾な知識を得る 知識ベース変更操作の形式化が必要である.
こうした問題に対して, これまでに多くの 知識ベース変更操作の形式化がなされてきた. Meyerは,統合オペレータの形式化 および統合オペレータのサブクラスである 多数決,調停オペレータなどの 形式化を提案している. Meyerの形式化では, Social Choice Theoryにおける集約操作を 知識ベース変更操作の枠組で うまく表現できている. また,Meyerの形式化では Arrowの定理が満たされないこと も示されている. しかし,Meyerの形式化は, 直観的に自然である公平さの規則が含まれていない, 多数決オペレータと調停オペレータの 関係が明確でないなど 従来の研究と比較して不十分な部分がある. そこで,本研究では, Meyerの形式化に対し, 公平さの規則の追加を行う. また追加した公平さの規則を用いて 多数決オペレータと調停オペレータが 異なるオペレータであることを示す. これにより, Meyerの形式化を基に 従来の研究成果をとりいれた 新たな知識ベース変更操作の形式化 を行うことができる.