従来,システムでは,中央集権的な制御方策が採られてきた.このような制御方 策では,システムの最適化を考 慮することが可能であった.しかしながら,近年,システムの規模・複雑性は増 大する傾向にあり,中央集権的 な制御では,環境変動に対する柔軟な対処が困難になりつつある.
このような背景から,自律性を有する複数のサブシステム間の相互作用を通し て,全体として合目的的にタスク を達成する自律分散システムが注目を集めている.このサブシステム間の相互作 用を通じて,環境適応性や拡縮 性,耐故障性といった優れた特性の発現が期待されている.しかしながら,この 相互作用の仕方を決定する明確 な設計指針は,未だに存在していないのが現状である.
そこで,本研究では,試行と評価を繰り返しながら効率的な解探索を可能とする 進化的計算手法に着目する.こ れにより,サブシステム間の相互作用を適切に利用するような制御則の創発が期 待できる.一方で,進化的に構 築した個体を解析し,その後の設計に反映させるためには,構築された遺伝情報 が設計者にとって親和性の高い 表現形式となっている必要がある.
上記考察に基づき,本研究では,遺伝的プログラミングを用いて自律分散システ ムの制御則を進化的に構築する ことを試みる.具体的には,ヘビ型ロボットの移動を取り上げ,環境に応じた適 切なロコモーションを迅速かつ 自己組織的に生成する自律分散制御則の構築を目指す.