本研究は、我々の研究室で開発しているオンライン手書き数式認識システムに おける文字認識手法に関する研究である。
コンピュータへの直観的な数式入力インタフェースを目指してきた従来のシス テムにおいて、文字認識率(80%)の向上が課題となっていた。今回は1画 の文字(ストローク)を対象とし、ストロークの特徴点抽出と認識に関する新 しい手法を提案する。
従来システムの文字認識率低下の原因として、ストロークの等分割点を用いた 表現によるストローク形状の変形があげられる。今回は入力ストロークの方向 変化に注目することで、形状をより正確に表現可能な特徴点抽出を目指す。ま た、オンライン文字認識においては認識率とともに処理時間も重要な要素とな るため、整数演算のみを用いるアルゴリズムで実装した。他の手法との比較に よって提案手法の有効性が示された。
以上で得たストローク表現は特徴点列の長さが一定ではなく、従来システムの 認識手法が適用できない。したがって、点列の長さの異なるストロークを評価 する手法が必要であり、今回はより本質的な認識手法を目指してベクトル場の 概念を導入した手法を提案する。これはストロークを入力する意図を一種の力 として捉えるもので、予備的な実装においては処理時間・認識率に関してとも に有効性が示された。