本報告では、3次元CT像に含まれる管腔臓器を仮想的に展開した像を作成す る手法について述べる。
胃や腸などの内部に広い空洞を持つ管腔臓器の観察を行なう際、元の形状 では臓器内 壁面全体を一度に観察することは困難である。そのため、臓器を計算機上で仮 想的に展 開した像を作成すれば、臓器内壁面全体を一枚の画像のみで観察可能となる。 また、実際の病理の場において摘出後の臓器を切り開き病変部の存在位置など の計測を行なっている。 以上より仮想的な病理標本が作成可能となれば診断に有効であると考えられる。
そこで、3次元CT像の変形によって臓器の展開像を作成する手法の開発を行なっ た。 この手法は、展開前のモデル図形(展開基準図形)として3次元CT像より臓器 の大まか な形状を表す三角形パッチ集合を得る。展開後のモデル図形(展開図形)とし て展開基準図形を実際に計算機上で切り開いた図形を変形計算から求める。 展開前後のモデル図形の対応関係を利用してCT像の再構成を行なうことで展 開3次元CT像を作成する。得られた画像から臓器壁面を抽出することによって 仮想臓器展開像(仮想病理標本)を作成する。
本手法を実際の3次元腹部CT像 に適用し、本手法の有効性を確認した。