近年の携帯情報端末の高機能化・低価格化により、誰もがいつでもどこでも携帯情報端末を持ち歩き利用するモバイルコンピューティ ングが日常的になりつつある。 それに伴い、人と人とが集まった時、互いに保持している端末間で情報の交換・共有を手軽に行いたいという要求が増えている。 その実現のためには、端末間で必要に応じて一時的に構築するネットワーク、アドホックネットワークの構築が不可欠であ る。
本発表では、我々の研究室で提案したアドホックネットワーク構築手法の一つである、漸増的に端末を認識するアドホック ネットワーク構築手法について発表する。 人と人とのコミュニケーションは、お互い話したい人に近付い てからコミュニケーションをするという性質を持つ。 すなわち、人の集まりにおいては、人は、集まった人全員とコミュニケーションをとりたいわけではなく、物理的により近い距離にい る人とより積極的にコミュニケーションをとりたいと思っている。 この性質に基づくと、人が携帯端末間を持ち寄り、端末間で通信したいとき、 近くの端末とは即座に通信できる状態にあることが望ましく、ネットワーク全体については即座に把握する必要はない。 そこで本手法では、近傍の端末 を探索により発見し、認識した端末とは即座にデータ通信しながらネットワーク情報を交換しアドホックネットワークを構築する。 これにより、各端末は、時間の経過と共に、近傍の端末から徐々にネットワーク全体を漸増的に把握していく。
本手法は携帯情報端末に標準搭載されている赤外線通信(IrDA)を物理デバイスに用いている。 このため、各端末は、特別な通信機器を必要とせず、いつでもどこでも手軽にアドホックネットワークを構築できる。