人間は何らかの根拠をもって信じていたことを新しい事実を知ることによって翻すことが ある。 このような、 前提となる事実が増加しても結論できる事実が単調に増加しないという特徴をもつ推論は 非単調推論と呼ばれる。 これまでに非単調推論を論理的な体系として形式化する様々な試みがなされ、 デフォルト論理、極小限定、 自己認識論理などの非単調論理が提案された。 これらの非単調論理に基づく推論は一階述語論理などの単調論理に基づく推論よりも計算 コストが大きくなるため、 その推論を効率的に行うことができる計算方法が望まれている。
いま、ある非単調論理を論理プログラムに変換することを考える。 論理プログラムとは事実と推論規則によってプログラムを記述する方式であり、 推論規則における否定条件の存在は論理プログラムに非単調性を与える。 もしこの非単調論理から論理プログラムへの変換が可能であれば、 それは次の2つのことを意味する。
1.の事実はこの変換が非単調論理で形式化されている推論の理解に役立つことを、 また2.の事実は非単調論理の計算に論理プログラムの効率的な計算方法が利用できること をそれぞれ示唆する。
本発表では非単調論理から論理プログラムへの変換の例として、 自己認識論理を多エージェント系に拡張した多エージェント系自己認識論理(MAEL)という 非単調論理の部分クラスを論理プログラムに変換する方法を提案する。