ファジィモデリングはファジィ推論を用いて対象とするシステムの入出力関係 を記述する手法である。この手法は、非線形な入出力関係の記述能力に優れ、 また、同定結果をファジィルールによって言語的に表現することで、人間に理 解しやすいモデルを作ることが可能であるため、非線形対象のモデリングの手 法として有力である。モデルの構造決定や入力変数選択は、複雑な探索問題に なるため、遺伝的アルゴリズムが適用される。ファジィルールの獲得において は、ユーザの要求に応じて多数の基準、例えば、精度、汎化性、耐ノイズ性、 ルールの連続性などを満たすものが必要とされることがある。遺伝的アルゴリ ズムを用いてファジィルールを獲得する場合、個々の評価基準の間にはトレー ドオフの関係があり、評価関数の適切な重視度を事前に設定することは難しい。 そこで、本研究では、遺伝的演算において、すべての評価基準についての妥協 解であるパレート最適解を求めることで種々のモデルの候補を生成し、より妥 当なモデルを得る手法について検討し、実問題への適用を試みる。