自然界や乗り物の周りの乱れた流れ場の中に局所的に強い渦構造が観察され、
渦構造の時間的な変化によって放射音が発生することが知られている。 例え
ば、航空機のジェットエンジンの騒音はエンジンのノズル口後方の乱れた流れ
の中の渦構造から発生する。 このような強い渦構造の一例として渦輪がある。
渦輪と半平面や円柱との相互作用による放射音について、KambeらやKnioらは
理論的あるいは実験的研究を行っている。 これらの研究の渦輪は航空機
ジェットなどで観測される渦輪に比べ弱いが、渦輪と物体の相互作用の基本的
要素を含んでいるので、得られた結果からジェット騒音の原因などについての
議論ができると考えられる。
本研究では、渦輪が半平面の縁の側を通過する際に発生する放射音に関する
数値シミュレーションを行い、実験では容易に得られない渦度の分布などに
より音の発生源の議論をすることを目的とする。 数値シミュレーションでは、
渦度ベクトルポテンシャル法により三次元非圧縮性渦度方程式を解き、渦度モー
メントの時間変化を計算する。 理論的解析の成果を利用して、この渦度モー
メントの時間変化により、発生する放射音を予測できる。
発表では、本研究の進行状況について報告する予定である。