自律ロボットの適応機構として、おもに強化学習や進化計算が用いられているが、 強化学習においては状態空間の分割・強化信号の生成法・報酬配分の問題、または 進化的手法においては、個体群を適応の対象としているためオンラインでの適用 は困難であるなどの問題点が指摘されている。このため、新たな手法の開発が望 まれている。
一方、生物は自己の行動が環境に適応しているかどうかをどのように判断しているのか 、という問いに対して、モデレーショニズムという概念が提案されている。これ は、生体には入力(あるいは出力)信号に対して、最も都合の良い信号レベルと いうものが存在し、生体は自身の内部パラメータを、都合の良い入出力関係を築 くように変化させているのに過ぎず、これが外部から眺めると、適応あるいは学 習という現象として理解されるというものである。
本研究では、このモデレーショニズムととらえることが可能な現象が、 免疫系にも存在することを示し、免疫ネットワークが構成要素である抗体を動的 に変化させることにより、全体として合目的的な機能を発現するメカニズムの提 案を行う。そして、歩行ロボットの歩容獲得を例に、提案する手法の妥当性を示 す。